壊れた場所が完全に戻った。
コンクリートのヒビすら完全に消えたことを確認してから、はゆっくりと地上へ降り立った。



〜」


「おうモコナ〜」



少しばかり疲れたのか、の微笑みに翳りが見える。
モコナはに飛びついてから、銀の頭を優しく撫でた。



「お疲れ様〜、


「ありがとう〜。って俺じゃないや、俺の巧断にありがとうだな」



素直に撫でられてホッと安堵の息が出る。
同時にの背中からは黒い羽が離れ、黒い虎に形を変えた。
そこに、先程からの傍にいた白い竜がシュルリと巻きつく。
はその姿を見てから、ニッと笑ってみせた。



「ありがとな〜。街直ったし、何より空飛べたし!


何より空かよ



巧断に礼を述べると後ろから小狼が駆け寄ってくる。
遠くから黒鋼のツッコミがかすかに聞こえたが、はケラケラ笑いながら巧断の頭を優しく撫でた。
ついでにモコナも彼等を撫でている。



「お疲れさん。もう戻ってもいいよ」



そうが言うと、答えるように目を細める白い竜と黒い虎。
瞬間、白と黒の風となり、混ざり混ざっての胸へと入っていく。
胸に熱さを感じながら、入りきったそこをポンポンと軽く叩いた。



、大丈夫だった?」


「大活躍だったねー」



小狼が心配そうに顔を覗き込んできた。
その隣にファイが立ち、ニコニコと微笑んでいる。
モコナを手に持ちながらはヘラヘラと笑ってみせた。



「いやぁ、空はよかったぜ!まるで人がゴ……ゲフンゲフン……アリのようだった!


何で言い直したのか良く分からないけど、無事ならよかったよ」



さすがにゴミはないだろう、ゴミは、と言葉を濁す。
の言いたいことは分からなかったのが幸い、小狼はホッとしたような顔で笑った。


(ご、誤魔化せてよかった)


心なしか自分もホッとしたはフゥと小さく溜め息を吐いた。
やはり『気』の消耗と同時に疲労を感じる。
これでは観光に全力疾走は出来ないだろう。
未だお腹に括られた縄を持ってクルクルと回してから縄の端をファイに渡した。



「ところでモコナ、羽根の調子はどうよ?」


「あ、あのね!さっき感じられたの!」


「マジでか!?」



モコナの言葉に、は目を瞬かせて喰いついた。
ちなみにこれは小狼たちには説明済だったらしい。
巧断の戦いの最中に羽根の波動を感じたのだが、今は消え、どこにあるか分からないとのこと。
シュンと凹むモコナに、は苦笑しながら頭を撫でた。



「でもこれでこの世界に確実にあるって分かったんじゃん。また頑張ろうな!」


「うん!」



隣ではモコナを落とした黒っちが悪いやら、その呼び方ヤメロだの声があがっている。
言わずもがな、ファイと黒鋼だ。


(仲良いなぁ)


隣のじゃれ合いに、はクツクツと笑いながらまたモコナを撫でた。
すると安心したのかモコナは小狼の頭の上へと移動した。



「あのあの!さっきは本当にありがとうございました!」



そこに現れたのは先程小狼が庇った学生服の少年だ。
小さな瞳がとても可愛らしい。
と小狼が目をパチパチと瞬かせて、目を合わせた。



「僕、斉藤正義<さいとうまさよし>といいます。お、お礼を何かさせて下さい!」


「いや、おれは何もしてないし」


「小狼はしただろ〜俺は何もしてないけど」



畏まってる小狼を腕で脇をつつく。
すると、「本当にしてないって」と迷惑そうな笑みが返ってきた。
まぁ、当たり前だ、断ろうとしているのにが促すのだから。
ニヤリとが笑うと、正義と名乗った少年はそうです!と声をあげた。



「それにあなたにもお礼させてください!」


「うえ?」



正義はにも視線を移した。
どうやら自分にも助けられたと感じているらしい。
は驚きながらもブンブンと首を横に振った。



「いやいやいやいや俺何もしてねぇだろ!ってか自分の巧断に驚いただけだろ!」


「でもでも!」



どんなに断っても全く食い下がらない。
と小狼がひたすら首と手を横に振る。
実際彼を助けたのは巧断だ。

お礼、と言われても。


(困ったなぁ…)


チラリと大人組に助けを求めようと視線を動かす。
が、彼等はまだ話している最中だ。
ちゃんと縄を離していないあたりが何か憎らしい。

本当にどうしよう、と思ったときだった。



「お昼ゴハン食べたい!おいしいとこで!!」


「え?」


「お?」


「はいっ」



小狼の声ではなくの声ではない。
ちゃっかり嬉しそうに返事をする正義を見てから、隣を見やると。

手をあげて主張するモコナがいた。







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