|
「…なんで、そこまで…?」 初対面の、自分達に。 最初に羽根を渡して。 治癒の『気』を倒れるまで使って。 羽根を探すのさえ、手伝ってくれる。 無償であるのに。 小狼の質問が部屋に静かに響く。 それは『気』の風に緩やかに乗って耳に届いた。 「理由が、必要?」 クツクツとが喉の奥で笑う。 背中の温もりを感じながら、小狼はしっかりと頷いた。 はそれを見て、また笑みを増す。 自分の中の『気』がなくなることを感じながら。 「友達になりたいからだよ」 「え?」 小さく紡がれる言葉。 小狼が聞き返すと同時に、背中から温もりが消える。 風も止み、後ろを振り返ると、息を荒くして後ろに手をつくの姿があった。 「あー、やっぱもっと『気力』が欲しいな。あ、ちゃんと最後まで自分の中にある『気』送れよ」 汗をも流して溜め息交じりに声を出す。 『気』を使い果たしたは苦笑をも零した。 「…」 サクラの手を握りながら、琥珀の瞳にを映す。 戸惑いに揺れる彼の表情を見ながら、ゴロリとはその場に横になった。 い草の香りが、鼻を擽る。 「あのさ、折角の旅なわけよ。で、同行者が沢山いるだろ?黒鋼もファイもモコナも。んで小狼とその女の子も」 自分だけ寝転がるのは大変悪いのだが、力は使いきった。 身体が動かないのだからしょうがない、とは這い蹲りながら小狼とサクラを見れるように動いた。 頬杖をついて、ニッと笑う。 「だったら、友達になって、楽しく旅したいじゃん」 黒鋼も、ファイもモコナも。 自分が少し年上だろうが、同じ年代位のサクラと小狼も。 例え、隠し事があろうとなかろうと。 「友達を助けるのは、当たり前だと思うけど?俺は」 困っているのなら。 自分に力があるのなら。 出来るだけの力で、助けられるのなら。 小狼とばっちりと目を合わせて言い切る。 しっかりとした言葉はちゃんと届いたらしい。 彼はそのまま、ゆっくりと頭を下げた。 「…………有り難う」 「気にすんな〜。俺がやりたいだけだから」 真剣な声に、は笑いながら返した。 転がりながらサクラの方へと移動する。 小狼もを追いながら、サクラへと視線を戻した。 『気』をしっかりと注いだが、量が少なかったせいもあり、あまり変化はない。 しかし、生きる時間が延びたのは確かだ。 「さくら…」 手を握る力が篭る。 祈るように両手で握っている小狼を見ながら、はまた頬杖をついた。 「少しでも早くさくらが目覚めるように、羽根を探すんだ。必ず!」 「……」 力強く言い切る。 それは信念を貫くために、言い放ったもの。 宣誓のようなそれに、は軽く溜め息を吐いた。 誓うのはいい。 信念を貫くのもいい。 だが、自分を追い詰めてはいけない。 精神の疲労を増す材料にしかならないのだから。 「うん、それは分かるけどな。でもあんま自分を追い詰めんなよ?」 眠っているサクラの頭を撫でる。 瞼にかかる髪を優しく分けながら、小狼の顔を覗き込む。 眉間の皺をクッキリさせている表情。 全く聞こえていないようだ。 は人差し指を、彼の額へと伸ばした。 「え、何を…ってイタタタタ!」 「みーけーんーのーシーワー!」 何事かと顔をあげた小狼の眉間に人差し指をつけ、グリグリと押す。 あまり力は入らないが、効果はあったようだ。 痛がって顔を離す小狼を見てから、は小さく息を吐いた。 「だから、そんな表情しなさんなっての。巧断だって一緒に戦ってくれるんだ、取り戻せるよ」 ポンポンと胸を叩くと温かくなる。 まるで勿論だと言ってくれているかのよう。 額を押さえている小狼は目を瞬かせて、をじっと見つめている。 「空ちゃんだって嵐さんだって。モコナだって正義だっている。黒鋼とファイは分からないけど、今だって料理手伝ってくれてるだろ」 自分は何もしないと言った黒鋼だって、今日なんだかんだで戦ってくれた。 ファイだって色々考えてくれてるかもしれない。 衣食住を用意してくれてる空汰と嵐。 探し物があると言えば助けようとしてくれる正義。 羽根を感知してくれるモコナだって。 「何もできないかもしんないけど、俺もいる」 巧断だけが頼りかもしれないけれど。 もいる。 「だから」 君に、無敵の呪文を。 過去、助けてくれた友達から貰った、この言葉を。 送る。 「『絶対に、大丈夫だよ』」 絶対に。 大丈夫だから。 頑張ろう 一緒に 「……」 小狼にとっては聞いたことのある言葉。 目を見開かせる彼に、は軽くウインクで返した。 「な?」 「………うん」 追い詰めていただろう表情が緩む。 安心感が小狼を包んでいく。 はそんな表情を見てから、ニッと笑ってゴロンと横になった。 「じゃあ俺寝るな。疲れたから」 ゴロゴロと転がってサクラから離れる。 部屋の隅へと着いたところで、は両腕を枕にして瞳を閉じた。 「え、なんでそんなに隅に?」 「それは隅が好きだからさ」 勢いよく転がって部屋の隅に移動していったことに驚いたらしい。 小狼の質問に簡単に答えて、は一つ欠伸を零した。 「布団敷こうか?」 「いいよ。所詮昼寝だしな〜。おやすみ」 ヒラヒラと手を振ってまた枕に戻る左手。 しばらくしないうちに、の口からは定期的な寝息が零れ始めた。 寝入りが早い。 小狼はその早さに目を軽く瞬かせた。 (…本当に、不思議だな…) の言葉がすんなりと、身体に入っていく。 まるであの治癒の『気』のように。 それに会ったばかりなのに、本当に友達のよう。 不思議な感覚に戸惑いながらも、笑みが自然と零れる。 「…有り難う」 旅の同行者。 それだけの関係を、数時間で打ち破って嬉しい言葉をくれた。 友達へ。 |