無事、阪神城のある駅にと着いた。
階段を駆け上がって、地図を記憶した小狼が一方を指さした。

恐らく、阪神城はここだとか言っているのだろうが、サッパリ分からない。
黒鋼もファイも何かコメントしているが、それもやっぱり分からない。
この状態も面白いのかもしれない。
はケラケラ笑いながら、城のある方角を見上げた。



「おーすげー」


「「「!!」」」



大きな城を見上げてがコメントする横で、三人が思い切り顔を見上げた。
立派で大きな日本城。
そして、一番上の屋根に誰かが吊るされているのが見える。



「モコナ!正義君!」



小狼が声を大きくあげる中、は目を擦った。
よくよく見ると、屋根にぶら下がる人は正義だ。
そしてその横で、小さく揺れてるのはモコナ。



「あんな所にいるよー。おーい」


「楽しそうじゃねぇかよ。白いほうはよ」


「てかあれ、ぶら下げた人って結構サドだよね」


「さど?」


「攻撃的って感じの意味…あ」



がそんな説明をして、ようやくそこで止まった。
ファイと黒鋼と小狼、全員で目を合わせる。

言葉が、通じていることに。



「通じてるな」


「うん、わかるね。お互い何しゃべてるか」


「ということはやっぱりモコナが…」


「翻訳機のかわりをしてたってことだねぇ。ほんとにすごいねーモコナは」



四人全員が同じ方向を向く。
風に揺れてブランコ如くのモコナ。
は少しばかりプゥと口を膨らませた。



「なんだよー。もうちょっと俺優越感に浸ってたかったのに〜」


「あはは、ここまで来たの、ちゃんと小狼君のお陰だもんねぇ」


もう英語が一ケタ台なんて言わせないぜ!ちくしょー」


「何の話だ」



全く関係ない話。
は青空に向かって叫んでいた。
ガッツポーズで。

英語という言葉があるとか、そんな説明は無用だ。



「とにかく行きましょう!」



そう、今はの英語のテストの話をしている時間ではない。
とにかく、正義とモコナを助けなくては。
手紙の送り主を探さなくては。



「おい、それって今後もあいつと離れると言葉が通じなくなるってことかよ」


「そうなるねぇ」


「あーめんどくせー!」



そんなことを大人組が話しながら、全員で走りだす。
勢いよく走り、大きな音を出すほどだ。
も一生懸命に走っている。
後ろから見てれば、それぞれ走り方にも特徴があるなぁとか思いながら。

城に近づくと、辺りは沢山の人で覆われていることに気付く。
しかも皆サングラスにタオルを頭に巻いて、と同じ格好ばかりだ。



「なんだこりゃ」


「いっぱいだねぇ」


「…ここまで皆一緒の格好すると凄い通り越して気持ち悪!


「…だから、お前言いたいこと言い過ぎだろ」



階段を上ればわかる、この同じ格好の人たちの多さ。
城を取り囲んでいて、数え切れないほど。
が正直に言ったところで、黒鋼が口を引き攣らせた。

しかしは訂正しない。
小狼はそれを気にすることなく、彼らの前で手紙を開いた。



「この手紙を書いたのは誰ですか!?」


「あたしよーぉ」



彼らの中に犯人はいるとばかりに声をあげていたのだが、後ろから声がかかった。
城の上。
しかも女性の声。

四人が反応するよりも速い反応が、そこにはあった。



「プリメーラちゃーん!!」


「ぎゃ!」



辺りにいた全員が声をあげた。
その声は一人一人の絶叫が合わさったために、耳には悪い。
コンサートでも行うみたいだ。
はそうくるとは思ってなくて、思い切り驚いた。

四人でようやっと上を見上げると、可愛らしい女の子が城の上にいた。
長いウェーブの、蒼い髪。
小さな翼が生えているような服。

達より若干年上だろうか。
それにしても可愛い。



「なんなんだあの女は」


「可愛い人だな」



黒鋼が顔を顰める中、は単純な感想を漏らす。
それに反応したのは、彼女ではなく辺りにいた変な人たちだった。



「プリメーラちゃんを知らないなんてモグリだな!」


「プリメーラちゃんはアイドルなんだ!」


「歌って踊れて美脚だぞ!朝の連ドラにも出てるんだぞ!」


「その上、すごい巧断が憑いてるんだ!可愛くて強いんだ!最高だ!」



ブーイングがほとんどだが、それも彼女、プリメーラを絶賛するもの。
どうやら有名人のようだ。
そして、彼らはいわゆる親衛隊とか、そんなものなのだろう。
この多さからして、かなりのアイドルなようだ。



「モコナと正義君を降ろして下さい!」


「正義泣いてるよ、アレ。降ろしてやってくれ〜泣いてるから!さすがに犯人がアイドルでも泣いてるから!」



小狼が必死に声を出す中、も助言とばかりに言葉を発した。
モコナは笑っているが、正義は涙を流している。
本気泣きだ。
さすがにそれは可哀想。
しかし、顔を顰めたのはプリメーラもだった。



「アレ、『シャオラン』じゃないの?」


「小狼はおれです!」


「『』でもないの?」


は俺ですけど」



小狼か、と勘違いしたのだろうか。
どう見ても似ていない。
髪の色からして違う。

どこが基準だったのか分からないが、本当に間違ったらしい。
プリメーラはそう叫びながら近くにいた親衛隊二、三人をハリセンで叩いた。



「用があるならおれが聞きます!早く二人を降ろして下さい!」


「俺でもいいなら俺が聞くから〜!正義マジで泣いてるから〜!!」


「だめよ」



そのまま返してもらえるかと思いきや、彼女は軽く突っぱねた。
軽そうな自分の身体を、屋根の上へと置く。
指をさして、ニッコリと可愛い笑みを浮かべた。



「返して欲しかったら、あたしと勝負しなさい」



ウインクつきの決めポーズだったらしい。
辺りの親衛隊が反応しまくって大きな声をあげる。
悲鳴に近い、興奮の声。
黒鋼がうるせーと声をあげるなか、も耳を塞いだ。
これはもう公害の域だ。



「登れる所を見つけないと!」



小狼が上を見て、戸惑いの声をあげた。
そういえば、彼は飛べない。
はその真実に目を瞬かせてから、ポンと手を叩いた。



「あ、じゃあ俺行く。俺飛べるし」



今回は戦闘になるだろう。
となると虎闇の出番だろうか。

そんなことを考えていると、それは白い手に遮られた。













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