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「今の羽根がなかったら、ちょっと危なかったねー」 小狼の様子を見て、ホニャッと笑うファイ。 言葉の内容は笑うものではないはずだが、この声だと全く緊張感が無い。 聞いてるこちらの力が抜けてしまうほどだ。 「おれの服に偶然ひっかかってたから…」 本当に危なかったとでも言うように顔を曇らせる小狼。 しかし、それは一瞬にして消えた。 「この世に偶然なんてない」 燐とした、声。 先程までの暢気な声色ではない。 ファイのその言葉は一瞬にして辺りを静まらせた。 侑子と同じ台詞。 はサクラと呼ばれる少女から、顔をゆっくりとあげた。 金色の髪の間から見える蒼い瞳。 まるで全てを見透かしたかのような光。 しかし、それはすぐに消えた。 「ってあの魔女さんがいってたでしょー」 いつもの調子に戻る声。 皆が緊張を解かしてズルリ、と体がずれた。 そんな中、だけはしっかりとその場に座り、彼の瞳から視線を逸らさない。 「だからこの羽根も君がきっと無意識に捕まえたんだよ。その子を助けるために。ま、おれもよくは分からないんだけどー」 やはりヘニャっと笑うファイ。 真面目さと不真面目さが行き来する。 はそこでようやく視線を少女へと向けた。 (…ファイは一癖二癖あるな) 今の一言二言で分かったこと。 真剣になったかと思いきや元に戻る。 これは二重人格とかそういう次元ではないものの、本当の自分を隠しているようにには感じた。 その分、黒鋼は真っ直ぐだ。 ツッコミの仕方といい、言葉といい、思ったことをすぐに口に出すタイプだろう。 (波のように揺らぐ蒼と、芯が真っ直ぐな情熱の紅…なんちてな。大人組はいいコンビになりそうだ) これからのことを考えると、不安と期待が混じる。 はそんな自分を嘲笑うように苦笑を漏らして手の中にある少女の手を優しく擦った。 自分より白い、細い手。 寝息をたてて眠る白雪姫。 「……王子様のキスで目覚めたりして」 ボソッと零れた独り言。 が、その瞬間、小狼はガバッと勢いよく少女を庇った。 どうやら、聞こえてしまったらしい。 心なしか琥珀の瞳が鋭いのは気のせいだろうか。 否、気のせいではない。 「冗談だって小狼…」 んな露骨に態度に表わさなくても。 台詞を取り消しても、彼は決して彼女を離そうとはしない。 それだけ彼女が大事だということが伺えるが…少しは信用してもいいのでは、と思ったのはだ。 そこに救助を出したのはファイ。 先程と同じようなのんびりとした声で「どうやって羽根を探そうかー」と言葉を発した。 うむ、と皆が考え込んでいると、意外な人物が手をあげた。 「はーいはいはいっ!モコナわかる!」 …人物、ではなかった。 白い動物だ。 元気よく手をあげる姿はまるで昔の小学生だ。 「はい、モコナ君!」 そこでノるのは。 まるで教師のようにそれを指す。 まぁ、の頭の上なので何かおかしいことになっているが。 モコナもの意図が分かったのか、「はい、先生!」と大きな声をあげて立ち上がった。 「今の羽根、すごく強い波動を出してる。だから近くになったらわかる。波動をキャッチしたらー…」 めきょっという音が部屋に響いた。 その瞬間に変わる皆の顔。 「うわ!」 「げっ!」 主に小狼と黒鋼が純粋に表情に出した。 驚き、と恐怖だろうか。 ちなみにファイは全くもって変わらない笑顔だ。 「モコナこんなカンジになる」 何か達成感を得たような、満足げな声。 その間にも、黒鋼は自分の胸をおさえて動悸をどうにかしようとし、小狼は汗が流れたままだ。 かなりの衝撃だったらしい。 ちなみに。 「え?結局どうなるの?俺サッパリ分からねぇんだけど」 の頭の上にモコナが乗ってしまっているためにが見ることは不可能。 ヒントは「めきょっ」という変な音と、彼らの反応だ。 だが、それだけで何が起こったか推測できるような、良い頭ではない。 「じゃあには本番で見せたげる〜」 にょっと頭から顔を出すモコナ。 その顔は何やら嬉しそう。 微妙にハミられたような気がしつつも、はそんときは宜しく、と笑ってみせた。 「だったらいけるかもしれないねー。近くになればモコナが感知してくれるなら」 「教えてもらえるかな。あの羽根が近くにあった時」 「まかしとけ!」 小狼の頼みに、モコナは胸をどんと叩いて偉そうに声を出した。 頼もしい限りの言葉に、微笑みが零れる。 「……ありがとう」 もつられて、ふんわりと笑ってみせた。 |