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「おまえらが羽根を探そうが探すまいが勝手だがな、俺にゃあ関係ねぇぞ」 良い雰囲気に、低い声が響く。 黒鋼だ。 壁に背中を預けたまま、紅の瞳がギラリと輝いている。 布団のもとに集まっていた皆が、そちらへと目を向けた。 「俺は自分がいた世界に帰る、それだけが目的だ。おまえ達の事情に首をつっこむつもりも手伝うつもりも全くねぇ」 ハッキリと主張する。 自分の目的も、これからのこともしっかりと。 (うん、やっぱり黒鋼は真っ直ぐだ) 自分にも、他人にも正直でいる。 このような人間は中々いない。 が紫苑の瞳を瞬かせていると、後ろから声があがった。 「はい。これはおれの問題だから、迷惑かけないように気をつけます」 真面目な返事。 それに驚いたのはと、それ以上に黒鋼が大きく目を見開かせた。 全くもって見当違いの答えだったのだろう。 何せ小狼は子供なのだ、もう少し甘えることがあってもおかしくはない。 とにかくも驚いたわけだが、自分で言っておいて驚きを隠せない黒鋼を見て。 「…プッ…プククッ……」 小さく笑い出してしまった。 その感情はファイも同じなようで。 「あははははー真面目なんだねえ小狼くんー」 笑い声を抑えることなく、笑った。 黒鋼はそれが恥ずかしかったらしく、目を逸らして舌打ちする。 それがまた可愛らしく、も遂にケラケラと笑い出した。 「そっちはどうなんだ」 「んん?」 居心地が悪そうに尋ねる黒鋼。 未だに笑っているではなく、返事をしたのはファイだ。 それでようやくの笑みが止まった。 「そのガキ手伝ってやるってか?」 「んーそうだねぇ」 黒鋼の問いにのんびりと考え始めるファイ。 しかし、そこまで真剣に考えず、まるで最初から決まっていたかのように微笑んで口を開いた。 「とりあえずオレは元いた世界に戻らないことが一番大事なことだからなぁ」 モコナがの頭から黒鋼へと移動する。 はそれを感じながら、微笑みを絶やさない青年をじっと見続けた。 黒鋼の紅の瞳も、彼へと注がれている。 それは、よりも鋭い。 「ま、命に関わらない程度のことならやるよー。他にやることもないし」 小狼に、優しく笑いかけるファイ。 そこでやっと、モコナが自分の肩に登ってきていたことに気付いた黒鋼は遠くで声をあげた。 はそれを、視界の端でしっかり見ながら、また小さく笑った。 (それにしても…本当に一癖二癖あるな〜) 黒鋼のように真っ直ぐに目的を言えたら。 考えをしっかりと言えたら。 でも、それは禁忌。 自分のそれは、しっかりと隠したままでないと意味がない。 誰にでも事情がある。 それはファイ、そして。 (俺も、同じこと) 兄にも、侑子にもさえ言えない、本来の目的。 本当の自分を隠しているように感じる、ファイとの自分との共通点。 はそれに気付かない振りをして、小狼へと紫苑の瞳を向けた。 「俺は手伝うよ?」 「え?」 さも当たり前、ようにが発言すると、小狼の目が見開かれた。 琥珀の瞳に、しっかりとの姿が映る。 は、楽しそうに笑みを深めた。 「だって俺、異世界を見て回れば満足だし。羽根探しって宝探しみたいで面白そうだし」 まるでイタズラっ子のような笑み。 本当に宝探しのように感じているようだ。 小狼は、少し戸惑いながら瞳を揺らす。 遠くからはこれまた、鋭い紅の視線が届く。 が、は無視した。 「それに、その眠り姫に早く挨拶したいしな」 腕の中の少女は何も知らず眠り続けている。 これから一緒に旅をするのだ。 せめて挨拶ぐらいしたい。 は、まるで握手をするかのように彼女の手を握る。 温かくなった柔らかい手、細い指。 自然と微笑む、自分がいる。 (………俺の本当の目的は言わない) 言ってしまえば迷惑をかけるから。 心労をかけるから。 それでも。 (……いつかは、分かること) 行動から。 言動から。 いつ零れてしまうかもしれない真実の欠片。 そのときまでは。 ただの『観光客』のままで。 ほのぼのとした空気の中。 それを途切れさせたのは、扉が開かれる音だった。 |